円錐の慣性モーメントの計算とその導出過程
初めに(20210619)
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円錐の頂点と底面の中心を通るZ軸周りの慣性モーメント
このセクションでは上図のような円錐に関して軸周りの慣性モーメントを求めます。
その前にその慣性モーメントを求めるために、まず図中の任意高さにおける厚さ
の部分に関しての円錐中にある円盤とみなした部分の慣性モーメントを最初に考えます(円盤の慣性モーメント@と同じ要領ですがここでは距離変数
を含む質量を
としています)。
円盤の対称軸に関する慣性モーメントの計算
円盤の中心軸を通りその円盤に対して垂直な軸の周りを回転する図のような半径が
の円盤の慣性モーメントを考えます。
上記画像の円盤の半径はとし、この場合、円錐内の微小厚さ部分の質量としているのでここでは高さ
における微小部分質量と考え、この時の微小厚さ円盤の質量を
とおくことに注意します。
座標系は2次元の平面極座標として考えれば、この時の微小部分の面積はヤコビアンによる計算により、
この時の微小円盤質量要素(微小要素の全質量)は、面積は
として考えるので微小円盤要素の密度
は、
これらによって円錐内の微小円盤要素内のさらに微小部分質量は以下のようになります。
回転軸からの距離は、
これらにより微小部分の慣性モーメントは次のようになります。
これを積分によって足し上げます。
よって円錐内の微小厚さにおける質量
の円盤の
軸周りの慣性モーメントは以下のようになります。
円錐の体積
円柱座標系における円錐の体積積分に関する計算過程
次に円錐の体積を求めます。
円錐の体積を求める場合デカルト座標ではなく次のような円柱座標におけるヤコビアンを使います。
またこの時において(図から)任意高さにおける円錐中の円盤の半径に関する距離変数
は、相似関係を利用して以下のように求めます。
微小体積要素は、
これらによりに関しては先ほどの相似関係によって
から
、
に関しては、
から
、
に関しては
から
になるので体積積分における重積分式は以下のようになります。
これを計算していきます。
よって円錐に関しての体積計算結果は以下のようになります。
ここから具体的に円錐の軸周りの慣性モーメントを求めていきます。
先ほど求めた円錐の体積と円錐の質量をとして円錐の体積密度を求めます。
円錐の体積 | ![]() |
---|---|
円錐の質量 | ![]() |
円錐内の任意の高さにおける微小厚さ
の円盤の
を微小部分の質量、その時の半径を
とします。
![]() |
任意の高さ |
---|---|
![]() |
任意の高さ |
また更に上記微小部分に関しての質量は、
と考えられます。
この任意高さにおける厚さ
の円盤の微小部分の質量
に関してはさらに以下のように面積と厚さの掛け算と考えられます。
これにより円錐の任意高さにおける微小厚さ
の質量は以下のように表現できることになります。
円錐内の任意高さのおける円盤と平行な軸に関する微小部分の慣性モーメント
円錐内にある円盤として考えた部分の慣性モーメントを求めます。
この円盤に関してのz軸周りの慣性モーメントをと置きます。
これにより、円盤の微小部分の慣性モーメントは上記の求めたを利用して次のようになります。
ここで先ほどの相似関係による円錐中の円盤における半径変数を代入すれば、
よりは次のようにおけることになります。
この求まったを全体にわたって積分計算していきます。
ここで上記積分計算を行うために変数変換をします。
次のように置きます。
これをで微分します。
このことにより積分範囲はではなく次のように変更になります。
![]() |
![]() |
---|---|
![]() |
![]() |
よって円錐の慣性モーメントの積分範囲は以下のようになります。
この積分範囲の変更によって積分計算をしていきます。
これより円錐の頂点と底面の中心と、重心をを通るz軸周りの慣性モーメントは以下のように求まります。
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